過活動膀胱(OAB:Overactive bradder)
かかつどうぼうこう
過活動膀胱(OAB:Overactive bradder)とは?
過活動膀胱は、「尿意切迫感を必須症状とした症状症候群で、通常は頻尿と夜間頻尿を伴い、切迫性尿失禁は必須ではない」と定義されています。以下のような症状のせいで患者様の訴えから診断される疾患です。過活動膀胱は40歳以上で12.4%に認められるとの報告があり、頻度が高く、また完全な治癒が難しいとされるため生活の質(QOL:Quality of life)を損なう慢性疾患とされています。
過活動膀胱の症状
- 尿意切迫感
「突然起こる、我慢できないような強い尿意であり、通常の尿意との相違の説明が困難なもの」とされています。つまり、急にトイレに行きたくなって我慢が出来ないような状態のことです。 - 頻尿
「排尿回数が多すぎるという患者さんの訴え」のことです。日中の排尿回数が7回以下であれば正常とされています。 - 夜間頻尿
「夜間就寝中に排尿のために少なくとも1回は睡眠が中断される」ことです。ただし、過活動膀胱とは無関係に起こることもあります(夜間多尿、前立腺肥大症、睡眠時無呼吸症候群など)。 - 切迫性尿失禁
「尿意切迫感と同時またはその直後に、尿が漏れる」ことです。
過活動膀胱の検査
自覚症状の問診
過活動膀胱症状スコア(OABSS)
過活動膀胱の治療
A. 行動療法
1)生活指導
過剰な水分やカフェイン、アルコールの摂取を控えることで頻尿や切迫性尿失禁の改善が期待できます。また、外出前にトイレに行く、外出時のトイレの場所を確認するなどのトイレ習慣を改善することで切迫性尿失禁を予防することができます。
2)膀胱訓練
少しずつ排尿間隔を延ばすことで膀胱内容量を増加させます。短時間から開始して
徐々に排尿間隔を延長し、最終的に2〜3時間の排尿間隔を目指す方法です。
3)骨盤底筋訓練
腹筋に力を入れないようにしながら、膣や肛門を締めるようにする方法です。腹圧性尿失禁に対して行われることが多いですが、過活動膀胱でも効果があるとされています。詳しい方法は広島大学泌尿器科外来でご説明が可能です。
B. 薬物療法
大きく分けてβ3アドレナリン受容体作動薬と抗コリン薬、漢方薬の3種類があります。抗コリン薬に関しては閉塞隅角緑内障の患者様に対しては使用できないため、緑内障と診断されている方はお申し出ください。
上記の治療を3ヶ月以上行っても治療効果がない、あるいは副作用で治療継続が難しい場合、難治性過活動膀胱とされます。その場合には以下のような治療法があります。
C. 神経変調療法
電気や磁気を用いて神経を刺激し、その働きを整えることで治療効果が得られると考えられています。2017年より仙骨神経刺激療法が保険適応となりました。この治療は2回に分けて手術が必要です。まずお尻の神経近くに神経刺激電極を埋め込み、治療効果を確認します。治療効果が確認できれば、刺激機械を体内に埋め込む手術を行います。広島大学病院では行なっておりませんが、関連施設で治療可能ですので、ご希望される方は紹介させていただきます。
D. ボツリヌス毒素治療法
ボツリヌス毒素とはボツリヌス菌により産生される神経毒素のことです。神経と筋肉の伝達を抑制することで筋肉を緩ませる作用があります。斜視や顔面痙攣等に使用されてきましたが、2020年4月より過活動膀胱と神経因性膀胱に保険適応となりました。頻尿や尿失禁の改善が期待できます。ただし、時間経過とともに効果が弱まってくるため、半年〜1年後に再度行うことがあります。ボツリヌス毒素を使用するには指定の研修を受けた医師の管理が必要ですが、広島大学病院では本治療を施行可能な医師が複数人在中しておりますので、治療可能です。
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