2025.04.07

日本初の前立腺肥大症に対するロボット支援下被膜下前立腺腺腫核出術(RASP)を開始しました。

ロボット支援下被膜下前立腺腺腫核出術(Robot-assisted simple prostatectomy)

広島大学病院では2024年5月に、本邦で初めての前立腺肥大症に対するロボット支援下被膜下前立腺腺腫核出術(Robot-assisted simple prostatectomy: RASP)を行いました。

*保険外診療での手術となります。

RASPのメリット

この手術は、特に大きな前立腺肥大症(80cc以上)に対して行うロボット支援下手術であり、これまで本邦では施行されてきていませんでした。これまでは大きな前立腺肥大症(80cc以上)に対して、開放被膜下前立腺腺腫核出術(Open simple prostatectomy: OSP)が施行されてきました。有効性が高く、長期効果も証明されている術式ですが、出血量が多く輸血率の高さや合併症の発生率の高さが問題となっていました。2000年以降は経尿道的前立腺核出術が施行可能となり、出血量の減少・合併症の発生率の低減により低侵襲な治療として普及していますが、一定の割合で発生する術後尿失禁や尿道損傷、尿道狭窄が課題であります。

RASPはロボット支援下に手術を行うことにより、OSPの課題であった出血量や合併症の発生率が大幅に改善し1、経尿道的手術と同等の安全性が報告されています。また経尿道的前立腺核出術で課題となっていた術後尿失禁や尿道損傷、尿道狭窄の発生率が極めて低いという大きなメリットがあります2。当科でもこれまでに複数症例施行し、長期的経過において合併症はなく、排尿機能の改善が得られています。

また、2008年に初めて米国で施行3されて以降、米国・欧州では既に広く普及し、米国泌尿器科学会・欧州泌尿器科学会のガイドラインでは大きな前立腺肥大症の手術療法の一つとして推奨されています4

手術の流れ

手術は全身麻酔下で行われます。膀胱内にロボットアームを挿入し、内尿道口の出口周囲の前立腺組織を全周性にくりぬく手術となります。手術後は、尿道留置カテを留置し経過を観察したのち、タイミングをみて抜去します。手術はおおよそ10日間を想定していますが、術後経過次第で前後します。

*2025年4月現時点において本邦では保険適応外であるため、自費診療となります。手術費用・入院費用(約10日間)を合わせておよそ192万円となります(入院されるお部屋・期間によって異なります)。

前立腺肥大症に対するRASPをご希望の患者様は、地域連携を通して当科の診察をご予約下さい。

1 Xia Z, Li J, Yang X, Jing H, Niu C, Li X, et al. Robotic-Assisted vs. Open Simple Prostatectomy for Large Prostates: A Meta-Analysis. Front Surg. 2021;8:695318.

2 Shelton TM, Drake C, Vasquez R, Rivera M. Comparison of Contemporary Surgical Outcomes Between Holmium Laser Enucleation of the Prostate and Robotic-Assisted Simple Prostatectomy. Curr Urol Rep. 2023;24(5):221-9.

3 Sotelo R, Clavijo R, Carmona O, Garcia A, Banda E, Miranda M, et al. Robotic simple prostatectomy. J Urol. 2008;179(2):513-5.

4 Sandhu JS, Bixler BR, Dahm P, Goueli R, Kirkby E, Stoffel JT, et al. Management of Lower Urinary Tract Symptoms Attributed to Benign Prostatic Hyperplasia (BPH): AUA Guideline Amendment 2023. J Urol. 2024;211(1):11-9.

Kitano H, et al. IJU case report in press.


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